ふゆっす。コットンカオっす。
突然ですが子供のとき、両親が結婚する前の話を聞いて、どんな少年・少女だったか想像することできましたか?
わたしは、お母さんが自分の子供の頃のこととか、結婚前にお仕事していた時の話をきくにつけ、江戸時代か大正くらいの遠い歴史上の出来事としてしかイメージできず「着物きて仕事通ってたの?」とか聞いてしまい、「失礼ね!」とこっぴどく怒られたものです。お母さんがお母さんじゃなかった頃のことなんてとうてい想像もできなかったのです。
先日観た
いまおかしんじ監督の最新作「おんなの河童」(ピンク映画なのに日独合作でミュージカルで撮影がクリストファー・ドイル!)がすごくよくて、なぜかお母さんと一緒にみたいなーとふと思った。主人公の笑顔がどこかお母さんに似てたからかもしれない。
「おんなの河童」の主人公の明日香は35歳で結婚を間近に控えているのだが、沼で溺れて死んだ高校時代の同級生・青木がなぜか河童になって突然目の前に現れ「チャゲ(高校時代のあだ名?チャゲアス!)のことを守る!」と宣言し婚約者と河童との奇妙な三角関係に…。
人生の大事な局面で河童の里にて、長老から「おい女!お前、子は産めるのか?」と問われたチャゲは、ちょっと躊躇したあとに「はい!たぶん、産めると思います!」と元気よく答えるその姿を見ていたら、この映画はやがて誰かのお母さんになる女の人が、「女の子」と呼ばれる最後の時期を過ごしているお話に思えてきてしまった。
母でありながらギャルであったり、自分の個性を生きることも今はできる時代だとは思うから、母でありながら「女の子」でもいられるとは思うけれど、やっぱり母親であることとは別に、純粋に一個の存在として「女の子だった時代」というものは歴然と存在しているような気がする。
女の子とオバサンの違いはいったいなんなのだろう。単に若々しくみえるとか、老けてるから、とかそういうことでもないと私は思う。子供を生んだか生んでないかもあまり関係ないかもしれない。恥じらいがあるかどうかとか?
SEX and the cityに出てくる人やアンチエイジング、美魔女みたいな世界観は、エネルギーの塊みたいでキャピキャピしていて元気だけど、私にとってはどちらかというとオバサンって感じがしてしまう。男性性がまさっている感じだからかな?このへん難しいところだ。
女の人は不思議なもので、たとえおばあさんでも、突然ふとした拍子にもう「女の子」としかいえない表情や仕草をすることがあってドッキリさせられる。(その逆、つまり少女なのに100年生きてる老婆のように見えることもある。)
少女、オバサン、お母さん、などは単なる現象のようなものでしかないのかもしれない。
いち、に、さんし、いち、に、さん
オバサンが動き出す
オバサンが立ち上がる
オバサンの腹が鳴る
オバサン オバサン オバサン
オバサンが考える
飯抜きで考える
どうしたもんかと考える
ない知恵絞って考える
スケベな頭で考える
ドイツのポップユニット
stereo totalがカタコトの日本語で歌う主題歌ではこれでもかってくらいにオバサンが連呼される(作詞は脚本の守屋文雄)。しかし単純に彼女が35歳で、もう若くはないっていうことを面白おかしく歌っている風ではなく、逆にオバサンと連呼されるほど正木佐和さん演じるチャゲがまぎれもなく「女の子」であることが強調されていくようだ。
チャゲはひとつの時代に区切りをつけるために踊っているのだ。次の世界でやがて出会うよきことを予感して、期待して、踊る。それは未来だけにむけられるのではなく、過去のどこかの地点へも別け隔てなく、等しく期待をよせ、胸を高鳴らせる。
5年後、10年後、明日、昨日、一週間前、15年前。どこにもきっとよきことがキラキラ隠れてる。
女の子は1年後、母になり、そして10年前にオバサンになって、その翌日にまた女の子に戻る。行きつ戻りつグルグルめぐっているのかもしれな。現象だから。
一方わたしのお母さんは今、母親の役目をほとんど終えてしまったせいか、
すぐおごってもらおうと甘えてきたり、自分で考えればわかりそうなこともいちいち電話で相談してくる。
「もう妹になったね」、と言ったら「こう見えてワタクシ、職場では施設長で、たくさん部下がいて、人望もあって、すごい人!って言われているんですケド!失礼しちゃう!」
と反論された。「人望あるって言われる」って口に出して言ってしまうところがなんだか浅い感じで、やっぱり妹っぽいなぁと思う。
お母さんがお母さんになる前は、どんな娘だったのだろう。チャゲみたいにこんなあふれんばかりの笑顔で歌ったり踊ったりとびはねていたのだろうか。さすがに河童には出会っていないだろうけど。いや、きっと出会ったことを忘れてしまっているだけかもね。いつかまた思い出すのでしょう。
※
「おんなの河童」は12/2(金)まで吉祥寺バウスシアターでレイトショー公開中。女性は1000円という太っ腹価格。お見逃しなく。
妹/55歳(ほっぺに手をあてたポーズは頬のたるみをカバーしているのだとか。日夜色々編み出してる模様。)